春期限定いちごタルト事件

2010年07月09日

ジャンルとしては探偵ものに入る。

入り口はライトな感覚で
とても読みやすく面白い。

しかし、物語に通する「小市民」という単語は
ストーリーが進むたびに重い言葉の意味を持つようになる。

シリーズは続き、「夏期限定」「秋期限定」とつながっていく。
特に「秋期限定」では
「小市民」という言葉が通常とは違う意味で輝き
主人公たちの悪質さが際立っていく。

大変に面白かった。

  


Posted by jeyson at 10:57Comments(0)ハードボイルド

探偵はバーにいる

2010年03月28日

日本の小説のハードボイルドは矢作俊彦氏しか書けないと思っているガチガチの方がいたりするが、個人的には素晴らしい作家が結構いると思っている。

この作品もそのひとつ。

札幌を舞台に、便利屋をしながら生きる「オレ」の周辺で起きる事件の数々。
いかなる組織にも媚びず、自身の信条と感傷的なやさしさで生きる無軌道で少しだらしない男。
シリーズが続くとともに時間が経過し、
子供ができるものの離婚し、腹の出た中年になっても性格が変わらない。
ハードボイルドのおっさんが一般的な考えから見れば、ずいぶん破綻した生活を送っていることがわかる。
しかし、それでも魅力を感じるのは、その生き方は男性の憧れだからか?

  


Posted by jeyson at 15:38Comments(0)ハードボイルド

マルドゥック・スクランブル

2010年03月16日

SFやハードボイルドの名を借りた
「娼婦とネズミのラブストーリー」
これまで生きてきた中で人生に膿み、汚れきった二人。
その二人の純粋な恋愛はとても美しい。

そして、二人の前に立ちふがる、歪んだ人物の歪んだ嫉妬は
オーバーテクノロジーの科学とともに暴力的な闘争になっていく。

全三巻。

後半はカジノが舞台となる。
ちなみにハリウッド映画に「ラスベガスをぶっ潰せ」という映画があるが
映画で描かれるカウンティングは
この作品で楽しむほうが、より楽しさを感じることができる。

  


Posted by jeyson at 00:01Comments(0)ハードボイルド

裸者と裸者

2010年03月06日

日本国内が戦争で滅茶苦茶になった近未来を描く。
拉致され、無理やり少年兵(奴隷)にさせられた主人公が、自分自身の戦闘の才能に気づき、少しずつ地位と世界を手に入れていく。
麻薬を強奪し、大金を手に入れ、自分の部隊、家族、友情を守っていく。
悪徳を悪徳として、迷いなく行う主人公は、それでも純粋な人間性を失わず、狂った世界で正しく生きていく。

淡々と残酷にかかれる文体は、魅力のある文章。

三部作(それぞれ上下巻の2冊ずつ)の予定だったようだが、作者は故人となり、未完のままとなっている。
ただし、一冊ずつで一応は完結している。
最終作の「覇者と覇者」は上巻のみであり、下巻がないことが非常に残念。

はずかしいことに作者「打海文三」は故人となってから知った作家だった。





  


Posted by jeyson at 10:09Comments(0)ハードボイルド

PageTop